UPSの基礎知識。必要性やリチウムイオン電池の性質を知ろう

UPSの基礎知識。必要性やリチウムイオン電池の性質を知ろう

データセンターやオフィスといったビジネス環境において、重要視されている装置の一つがUPS(無停電電源装置)です。UPSが必要な理由から、バッテリーとして採用されているリチウムイオン電池の性質・危険性まで、導入の検討に役立つ知識を解説します。

 

 

 

UPSの重要性

UPSは停電など電源障害が発生した際、電源の供給が必要な機器に対して一定時間、電源を供給し続ける装置です。無停電電源装置とも呼ばれ、データセンターやオフィスで大切な機器やデータを保護するために、重要な役割を果たしています。日本ではめったに停電は発生しないため、UPSは必要ないと思うかもしれません。しかし、停電と一言でいっても実際は細かく分類されており、「瞬低」「瞬停」「停電」の3種があります。それぞれの意味は次の通りです。

 

瞬低:瞬時電圧低下。落雷などにより送電線の電圧が降下することで起こる0.07〜0.2秒程度の停電

瞬停:送電線ルートの切り替えなどによる1秒未満の停電

停電:1秒以上の停電

 

この他にも電圧の変動やノイズの発生など、正常な電源供給が阻害される現象がいくつかあります。いずれも業務上必要なネットワーク環境やメモリデータに、大きな影響を与えかねません。

「瞬低」に関しては、地域差はあっても多いところで年20回程度は起こるといわれています。月に2回に近い頻度で、機器環境が危険にさらされている計算です。そして一度でも停電で機器が停止してしまうと、サーバーの停止やデータの喪失、生産ラインの停止といったトラブルが発生します。

回復のためには多大な時間と工数がかかり、場合によっては復旧不可の事態に陥る可能性もゼロではありません。そういった最悪のケースを防ぐためにも、UPSはデータセンターやオフィスに必須といってよいでしょう。

UPSに採用されるリチウムイオン電池

従来のUPSのバッテリーには鉛蓄電池が使われていましたが、近年はリチウムイオン電池を採用する製品が増えてきました。なぜリチウムイオン電池にシフトされつつあるのか、リチウムイオン電池の利点から解説します。

コンパクトで軽量

リチウムイオン電池は同じエネルギー容量を持つ鉛蓄電池と比べて、はるかに小型で軽量(約45%の重量)という性質を持ちます。これはデータセンターやサーバールーム、オフィスなどスペースが限られている環境では大きなメリットです。

リチウムイオン電池の採用により設置スペースを最小限に抑えられれば、サーバーをはじめとしたIT機器の設置スペースを確保しやすくなったり、設置場所にかかる費用を削減できたりといったメリットが生まれます。

エネルギー密度が高く寿命が長い

リチウムイオン電池は、鉛蓄電池よりもより高いエネルギー密度を持つ上に、より長いサイクルライフを提供します。

電力供給が途絶えてもUPSシステムからのバックアップ時間が延長されれば、その間にシステムやパソコンを安全に終了したりジェネレーターを起動したりと、大切なデータを守るための対策が可能です。

また、リチウムイオン電池は、鉛蓄電池の最大10倍という充放電サイクル数を誇り、寿命も8〜10年と最大で3倍長持ちします。これにより、メンテナンスや交換頻度が大幅に低減されるのが大きなメリットです。

導入時のコストは鉛蓄電池と比べ高価になるものの、メンテナンスや交換にかかる費用を鑑みれば、5年・10年という長期間で見たときのコストはリチウムイオン電池の方が少なくなります。

UPSの基礎知識。必要性やリチウムイオン電池の性質を知ろう

 

環境に配慮した電池である

社会全体の動きとしてSDGs(持続可能な開発目標)が注目され始め、より一層環境に対する問題に対しての動きが活発になっています。環境省から発表された2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略では、「2040年までにデータセンターのカーボンニュートラルを目指す」と発表されました。

データセンターのゼロエミッション化(再エネ活用比率・省エネ性能の向上など)に向け、環境に対する改善が強く求められています。

鉛蓄電池の材料として使用されている鉛は、生き物に害をもたらす可能性がある物質です。一方でリチウムイオン電池の主な材料であるリチウム・炭素・マンガン・ニッケル・コバルトなどの物質は、環境に対する負荷が低いといわれています。

環境への配慮という新たなニーズを受け、バッテリーにリチウムイオン電池を採用したUPSが有利になってきている状況です。

リチウムイオン電池UPSは危険?

UPSのバッテリーとして主力のリチウムイオン電池ですが、安全性について不安に思う人もいるでしょう。よく耳にする発火や爆発のリスクについて、実際のところはどうなのかを解説します。

発火・爆発リスクは「コバルト系」に見られるもの

リチウムイオン電池についての懸念点として、発火や爆発のリスクが挙げられます。リチウムイオン電池搭載のスマートフォンやモバイルバッテリーから発火したというニュースを見て、不安に思った人も多いかもしれません。

確かにリチウムイオン電池には、過充電や過放電・短絡・過熱などの要因によって、発火や爆発を引き起こすリスクがあります。ただ、このリスクはリチウムイオン電池の種類によって変わるものです。

一口にリチウムイオン電池といってもさまざまな種類が存在し、それぞれ特徴が異なります。代表的なリチウムイオン電池とその特徴を見てみましょう。

 

コバルト系リチウムイオン電池(LiCoO2):世界で初めて商品化された。熱暴走など安全性に問題あり

ニッケル系リチウムイオン電池(LiNiO2):高容量だが、ショートなど安全性に問題があり

マンガン系リチウムイオン電池(LiMn2O4):熱安定性に優れていて安全性が高く、車載用電池として利用されている

三元系リチウムイオン電池(NMC):ニッケル・マンガン・コバルトの頭文字を取った化合物。それぞれの長所を取っており安全性が高い

リン酸鉄系リチウムイオン電池(LiFePO4):熱暴走が起こりにくく、安全性が非常に高い

UPSの基礎知識。必要性やリチウムイオン電池の性質を知ろう

 

ニュースで見るような発火の事故は、コバルト系リチウムイオン電池を採用していたものがほとんどです。コバルト系はエネルギー密度が高く小型で軽量なためスマートフォンなどでよく利用されています。

一方UPSで採用されているリチウムイオン電池は、リン酸鉄系・三元系・マンガン系の3種類です。ビジネスの根幹となるデータセンターでは、万が一の発火や爆発が甚大な被害を与えかねません。スマートフォンのような機器より、安全性の高い電池が採用されています。

自社にUPSの導入を検討するに当たって、発火や爆発のリスクは、適切な製品を選定する限り心配する必要はありません。

UPS導入の相談は明京電機に

データセンターやオフィスのように電源供給を途絶えさせられない環境で、UPSは必須の装置といえます。とはいえ市場には多くのUPSが出回っているため、実際に導入しようと思ったとき、どれを選べばよいか分からないという悩みもあるでしょう。

明京電機は、データセンターや各産業・商業向けにデジタルインフラストラクチャー技術を提供するVertiv(バーティブ)社の一次代理店です。Liebert社を取り込んだVertiv社が提供する、さまざまな種類のUPSを取り扱っています。

明京電機のサポート体制により、状況に合わせたソリューションの提供・購入後のサポートも可能です。長年にわたって電源制御装置を扱ってきた経験から、状況に合わせた選定のサポートや購入後のフォローを用意しています。

UPSに関しての疑問や相談があれば、ぜひ問い合わせフォームやお電話でお問い合わせください。

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